育児・介護休業を取得しやすい職場環境をつくる
育児・介護休業などの両立支援制度を労働者が利用しやすい職場環境をつくることで、労働者はもちろんのこと、企業側にもメリットがあります。
○働きやすい職場環境だと内外にアピールすることができ、若年者の人材獲得に繋がり、定着率もアップする。
○育児や介護のためだけではなく、感染症の流行や長期の病気休養、年次有給休暇の取得など、欠員が生じても対応できる勤務体制を整備できる。
○休業者の業務をカバーする中で、労働者が新たな仕事にチャレンジでき、スキルアップや新たな適正の発見に繋がり、人材戦略にもプラスになる。 など
しかし、こういった職場環境の整備は従業員数の少ない事業所では難しいという経営者の声も聞かれます。
どのようにすれば制度を利用しやすくできるのか?…重要なポイントは、その事業所に合ったワークシェアリング(分業制)を導入することであると考えます。
ワークシェアリング導入のポイント
ワークシェアリングの導入にあたり、まずは事前に業務の棚卸し(洗い出し)を行い、特定の労働者だけが担当している業務や業務量の偏りをできる限り削減し、マニュアル化を進めることで社内全体の業務を標準化します。
その上で、事業所や休業する労働者の特性に合わせて、効率的に仕事をまわせるワークシェアリングの方式を採用するのが最適です。
・少人数の事業所や、休業者が専門的な業務を行っている場合
順送り方式…休業者の一番近い仕事をしている労働者が穴埋めをし、その後任者の仕事は直下のポストにいる労働者が継ぎ、順々に仕事を回していく。
後任者はゆくゆく昇進したときに上のポストの仕事をするので、先に仕事を経験することができるメリットもある。
・人数に余裕のある事業所や、休業者が一般的な業務を行っている場合
分担方式…休業者の仕事を部署内の同様の仕事をしている労働者が複数でカバーする。
ある程度の人数が必要だが、大きな体制の変更が必要なく、短期間での導入が可能である。
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順送り方式と親和性が高い人事制度としては、キャリアパス制度があります。
キャリアパスは、それぞれの段階(キャリア)ごとに「業務の内容」と「その業務に必要な能力」を設定し、あらかじめ明示しておく制度のことで、労働者は昇進に向けた目標が明確になるためモチベーションがアップし、企業の人事評価も容易になります。
またキャリアパスは、フルタイム勤務であってもパートタイム勤務であってもキャリアごとに共通の業務を設定するため、従来型の正社員とパートタイマーを分断する制度ではパートタイマーから正社員への登用という一方通行だったところを、ライフプランに応じて労働者が働き方を選択できるようにも設計できます。
さらに、同一労働同一賃金の観点からもキャリアパス制度の導入は有効だと考えられます。
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両立支援制度を利用中の労働者の人事評価にあたっては、休業中は業績評価ができないため、能力評価を重視するなど、休業中の労働者に不利にならないよう配慮することも大切です。
両立支援等助成金の活用
休業者の業務をカバーする労働者に臨時手当を支給する際や、代替要員を新たに採用する際には、相応の原資が必要となります。
育児休業や介護休業は、休業中の労働者が雇用保険の加入要件を満たしている場合に給付金が支給されるためにその間の給与支払いが不要となり、また、育児休業中の労働者は社会保険料の免除もあり企業側の負担もなくなるため、それによって経費に余剰が生じますが、さらに両立支援の助成金を活用することで、より手厚い処遇を行うことができます。
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令和6年度の両立支援助成金では、労働者の育児休業取得について、男性労働者が育児休業を5日以上取得した場合に最大30万円を受給できる「出生時両立支援コース」(第1種)や、男女労働者が連続3か月以上の育児休業を取得した場合に30万円、職場復帰時にさらに30万円を受給できる「育児休業等支援コース」があります。
※育児休業を取得しやすい職場づくりのための環境整備や、育児休業の取得と職場復帰のためのプラン作成等が必要となります。
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育児休業中の労働者の業務代替については、7日以上の育児休業取得者のカバーを行った場合に最大125万円、1か月以上の育児短時間勤務者のカバーを行った場合に最大110万円を受給できる「育休中等業務代替支援コース」があります。
その他、育児中の労働者が働きやすい制度を導入し、労働者がその制度を利用した際に最大25万円を受給できる「柔軟な働き方選択制度等支援コース」があります。
※就業規則の整備や業務体制のプラン作成等が必要となります。
当事務所では、法改正に合わせた育児・介護休業規程等の作成および改正や、両立支援制度に関する社内研修、休業中の労働者の業務代替体制の整備など、幅広く対応いたします。