ハラスメントを起こさせない職場をつくる

ハラスメントとは何か

法律では、ハラスメントとは

  • パワハラ・・・優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の就業環境が害されること
  • セクハラ・・・職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により、労働者が労働条件について不利益を受け、または労働者の就業環境が害されること
  • マタハラ・・・(女性労働者が)妊娠・出産したこと産前・産後休業や育児・介護休業等の制度の利用に関する言動により、労働者の就業環境が害されること

と定義されており、企業が防止すべきハラスメント行為とは、労働者の就業環境が害される程度のものであるということになります。

例.「身体的・精神的な暴力行為」

  ※上に行くほど重い

刑法上の違法行為=傷害罪、暴行罪、脅迫罪などにあたる程度

民法上の不法行為=権利侵害による賠償請求が認められる程度

行政指導の範囲=労働者の就業環境が害される恐れのある程度

企業秩序の範囲=労働者の就業に影響を与える程度

➡法律で企業に求められるのは”行政指導の範囲”以上のハラスメント行為の防止であるが、労働者の就業環境を整えることが生産性アップにも繋がるので、より広く捉えるのが理想。

※企業がハラスメント防止の為に必要な措置を取っていない場合に、行政(都道府県労働局)が企業に対して指導を行う。

セクハラの具体例
性的な内容の発言
・容姿(身体、服装)へ言及すること。
・他人の性的事情を流布、吹聴すること。
・他人の性的事情に関する質問、言及をすること。
・自身の性的経験を語ること。
・(本人の意に反する)夜のディナー、飲み会、泊まり、性的行為に誘うこと。
性的な行動
・必要のない身体接触、接近をすること。
・性的なもの(写真など)を見せること。
・性的関係を強要すること。

マタハラの具体例
妊娠・出産・制度利用を理由とする不利益取扱いの示唆
・妊娠・出産が業務に悪影響を及ぼす等の発言をすること。
・(上司が)降格、人事評価等の引き下げをほのめかすこと。
・自主的な退職を促すような発言をすること。
(産休・育休などの)制度利用の阻害の示唆
・(産休・育休などの)申出を控えさせるような発言をすること。
状態への嫌がらせ
・(労働者の)妊娠・出産・育児等を快く思わないような発言をすること。
(産休・育休などの)制度利用への嫌がらせ
・(労働者の)制度利用を快く思わないような発言をすること。

パワハラの具体例①
身体的な攻撃
・殴打、足蹴りを行うこと。
・相手に物を投げつけること。
・書類で机を叩いたり、ドアをわざと強く閉めたり、大きな音を出すこと。
精神的な攻撃
・人格を否定するような言動を行うこと。
・業務の遂行に関して、必要以上に長時間にわたる激しい叱責を繰り返し行うこと。
・他の労働者の面前において、大声で威圧的な叱責を繰り返し行うこと。
・相手の能力を否定し、罵倒するような内容のメッセージチャット等を相手を含む複数の労働者宛てに送信すること。
人間関係からの切り離し
・自身の意に沿わない労働者の仕事を取り上げ、長時間にわたり別室に隔離したり、自宅研修させたりすること。
・1人の労働者に対して、同僚が集団で無視をし、職場で孤立させること。

パワハラの具体例➁
過大な要求
・長時間にわたり、肉体的苦痛を伴う過酷な環境下での勤務に直接関係のない作業を命じること。
・新入社員に対し、必要な教育を行わないまま到底対応できないレベルの業務目標を課し、達成できなかったことを厳しく叱責すること。
・労働者に業務とは関係のない雑用の処理を強制的に行わせること。
過小な要求
・管理職である労働者を退職させるため、誰でも遂行可能な業務を行わせること。
・気に入らない労働者に対して、嫌がらせのために仕事を与えないこと。
個の侵害
・労働者を職場外でも継続的に監視したり、私物の写真を撮影したりすること。
・休日や夜間に私的な用事でメッセージチャットを送信し、反応を求めること。
・労働者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、本人の了解を得ないで他の労働者に暴露すること。

上記はあくまでハラスメントの一例ですが、ハラスメントに該当するか否かの重要なポイントは「平均的な労働者がどう感じるのか」であると、国の指針に示されています。

ハラスメントを起こさせない職場をつくるには

企業がハラスメント対応を行うにあたっては、法律の要請に沿った「ハラスメント防止措置」を講じる必要があります。

ハラスメント防止措置に求められる要件

  • ハラスメントの内容、ハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
  • ハラスメントの行為者について、厳正に対処する旨の方針・対処の内容を就業規則等の文書に規定し、管理監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
  • 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。
  • 相談窓口担当者が、内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
    ハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、発生のおそれがある場合や、ハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応すること。
  • (ハラスメントが発生した場合に)事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
  • 事実確認ができた場合には、速やかに被害者に対する配慮の措置を適正に行うこと。
  • 事実確認ができた場合には、行為者に対する措置を適正に行うこと。
  • 再発防止に向けた措置を講じること。
  • 相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、周知すること。
  • 事業主に相談したこと、事実関係の確認に協力したこと、都道府県労働局の援助制度の利用等を理由として解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
  • 業務体制の整備など、事業主や妊娠等した労働者その他の労働者の実情に応じ、必要な措置を講じること(マタハラのみ)。

これらの内容を踏まえた、企業が取るべきハラスメント対応の具体例を紹介します。

労働者のハラスメント相談を受け、最初に対応する窓口です(設置は義務)

ハラスメントにあたるか微妙なケースであっても広く対応する必要があるため、この段階では窓口担当者は相談者の声に耳を傾けることに重点を置き、ハラスメントにあたるか否かについて主観や意見を述べるべきではありません。

相談者(被害者の場合)の現在の状況心身の健康状態会社に求める対応などを聴取し、窓口担当者は相談者に寄り添う姿勢を心掛けます。

会議室や外部の施設などで面談を行う、相談担当チームのみで情報を共有するなど、相談者のプライバシー保護にも細心の注意を払う必要があります。

ハラスメントの被害者だけでなく、目撃者などの第三者からの相談も受け付けます。

その後の進捗確認や報告のため、相談者の連絡先を確認しましょう。

対象者へのヒアリング

相談者から受けた相談内容をもとに、ハラスメントの被害者、目撃者、行為者等にヒアリングを行い、事実関係を確認します。

客観的視点からの事実確認やハラスメント該当性の判断まで行うため、相談窓口とは別の部署(人事部やコンプライアンス委員会など)が担当することが望ましいです(任意)

ヒアリングを行うチームは中立性が重要とされるので、ハラスメント事案の当事者と利害関係のないメンバーで構成する必要があります。場合によっては、被害を黙認した上司の監督責任を追及することもあり得ます。

ヒアリングでは、被害者および行為者の業務の内容被害者と行為者の地位や関係性行為者の言動の様子発生日時・場所行為者の言動に対する被害者の対応被害者の希望などを聴取します。

その上で、両当事者の過去の就業上の問題の有無職場での配置客観的な証拠(メッセージチャット、録音データ、日記やメモなど)を考慮して事実確認を行います。

ヒアリング調査は就業時間内に実施し、相談窓口と同様に対象者のプライバシー保護に注意を払い、聴取した内容によって不利益な取扱いを受けないことを対象者に伝えることが大切です。

なお、セクハラの場合は行為者が取引先など社外の者であっても、当該取引先に対して調査協力を求めるなど対応する義務があります。

ハラスメント該当性の判断

対象者から聴取した供述の具体性や一貫性証拠の信用性ヒアリング中の対象者の態度などをもとに事実認定を行い、就業規則で禁止するハラスメントに該当するか否かを判断します。

セクハラ行為は業務上の必要性がない言動なので、事実が認定されればハラスメントに該当する可能性が高いですが、パワハラ、マタハラは言動が事実であったと認定されても、業務上の必要性(その行為を行う必要があったのか?)まで考慮する必要があります。

ヒアリング調査の結果、ハラスメントの該当性が認められれば、行為者には就業規則に従って適切な懲戒処分を行い、被害者の救済としては、行為者からの謝罪や、被害者と行為者の就業場所の引き離し被害者の心身の医療的ケアなどを行います。

ハラスメントの後処理を行った後、また、ハラスメントに該当しなかった場合や、調査を実施しなかった場合においても、疑われる事案が発生したのであれば、ハラスメントの起きやすい組織風土があるという現れでもあるので、研修や就業規則の見直しを行うべきです。

ハラスメント防止研修では、従業員に向けては、ハラスメントへの正しい理解を得ること相談窓口を活用することなどを伝え、管理職に向けては、指導方法によってはパワハラになること部下のハラスメントを見過ごすことで監督責任が問われることもあり得ることなどを伝えると良いでしょう。

職場のコミュニケーションの活性化、円滑化を図ることは、ハラスメントの防止に繋がるだけでなく、企業の生産性をアップさせることにも繋がります。