えるぼし認定のポイント

えるぼし認定のポイント

女性活躍の取組みが進んでいる企業に与えられる「えるぼし」の認定を受けることで、様々なメリットがあります。

○自社のホームページや商品、従業員の名刺にえるぼしマークをつけることで、性別に関係なく、多様な人材が活躍できる企業であるとアピールでき、企業イメージの向上や優秀な人材の確保に繋げられる。

○建設業者が公共工事を受注する際に必要となる経営事項審査など、公共調達(国や地方公共団体が行う入札契約)で加点評価を受け官公庁が発注する仕事を落札しやすくなる。

日本政策金融公庫の働き方改革推進支援資金(融資限度額7億2千万円)を、通常よりも低金利で利用することができる。

また令和6年4月からは、法人税の賃上げ促進税制の控除率アップの対象にえるぼし認定企業も含まれることになり、えるぼし取得の価値はさらに高まっていくと予想されます。

※上記の一覧については、くるみん認定企業も同様の優遇措置を受けられます。

えるぼし認定の審査を実際に労働局で行っていた私の経験から、えるぼしを取得するために重要なポイントを簡単にまとめます。

認定基準を知る

えるぼし認定の申請を行う前に、女性活躍推進法における一般事業主行動計画策定・変更届を、本社所在地を管轄する都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に届け出た上で、女性の活躍推進企業データベースや自社のホームページに自社の女性の活躍に関する状況を公表する必要があります。

えるぼし認定の審査は行動計画で定めた期間ではなく、企業の事業年度をベースに行うので、上記の二点を実施すれば行動計画の期間が経過していなくても申請はできます。

申請を行える段階になりましたら、次に自社が審査を通過できる状態にあるのか、どのように申請すればよいのか見極めることが重要です。

えるぼしの認定基準には、「採用の競争倍率の男女差(または既存正社員の女性比率)」、「男女の平均継続勤務年数の差異」、「労働者の各月ごとの平均残業時間数」「管理職に占める女性労働者の割合」「女性労働者のキャリアアップ」の5つの項目があります。

この5つの認定基準を全てクリアすれば三つ星のえるぼしを取得できるのですが、二つ星と一つ星のえるぼしは、単に3~4つ、1~2つの認定基準をクリアすればよいだけではなく、クリアしていない認定基準の項目を、過去2年以上連続で改善していなければ取得できません。

これらの認定基準のうち、「男女の平均継続勤務年数の差異」と「管理職に占める女性労働者の割合」の項目をクリアするのが特に困難で、認定に至らなかった企業の多くがこの項目で落としています。

なぜならば、平均継続勤務年数の男女差は現状でクリアできる水準になければ改善が困難であり、管理職の女性比率は女性活躍推進法の管理職の定義を満たさない管理職が多いからです。

申請にあたって企業の実態をありのまま伝えることは大前提ですが、申請の仕方によってはこの項目を有利にアピールすることができるポイントが幾つかあります。

雇用管理区分を整理する

5つの認定基準のうち、「採用の競争倍率の男女差」、「男女の平均継続勤務年数の差異」、「労働者の各月ごとの平均残業時間数」については、雇用管理区分ごとに要件を満たすこととなっています。

雇用管理区分とは職種(事務、営業、技術系etc.)雇用形態(正社員、契約社員、パートタイマーetc.)等によって分ける労働者の区分のことで、細かく区分けするとそれぞれの区分で認定基準の要件を満たさなければならなくなるため、クリアするのがより困難になってしまいます。

雇用形態が異なる場合は同一の区分とすることはできませんが(正社員とパートタイマーなど)、例えば正社員の中で事務職と営業職が分かれていたとしても、それぞれ職務内容の変更や、異動、昇進の範囲に差がなく、それらについて就業規則や雇用契約書等で判別できるものがあれば、同一の雇用管理区分とみなすことができます。

他にも、異なる雇用管理区分であっても、それぞれの労働者のキャリアの見通しや賃金の額に大きな差がない場合には、全労働者の1割に満たない区分を他の区分とまとめることができるという特例もあり、これらのルールを活用することで上記3項目のクリアが容易になることがあります。

認定基準の要件を満たしているかを証明するために、審査担当者から労働者リストの作成を求められることがあります。

その際、申告した内容とリストとの整合性が合わなければ審査を通過することが困難となるので、作成には作成例のように細部にわたる注意が必要となります。

また、提示する労働者の情報についても、審査に必要な最低限の情報のみ提示すればよいので、過不足ない情報を伝えることも重要です。

女性活躍推進法の”管理職”の定義

管理職に占める女性労働者の割合」における管理職とは、女性活躍推進法独自の以下の定義を満たす管理職でなければなりません。

◇「課長級以上の役職であること。

◇「課長級とは、①…課長と呼ばれている者で、2つ以上の係を下に持つ部署の長、または、課長本人を含めて10人以上在籍する部署の長、➁…①の要件を満たさない者であっても、職務の内容や責任の程度が課長級に相当する者(一番下の職階はNG)。

課長級の要件については審査が厳格化されたため、①の条件を満たす者であれば問題なく課長級に該当しますが、➁の条件で課長級であることを証明するためには、例えば役職者に役職手当を支給する企業であれば賃金規程の該当する箇所を添付するなど、追加の証明書類を求められることもあります。

管理職の定義は男女関係なく、共通のルールを採用してカウントを行わなければなりません(女性は①と➁、男性は①だけでカウントするなどはNG)。

管理職をどのようにカウントしたかを証明するために、作成例のような表を追加で求められることもあります。

企業によって組織の構成は様々なので表も一様ではありませんが、ポイントは役職者の性別がわかること、役職名が記載されていること、部署ごとの構成員数がわかることなどです。

労働者リストと同様に、こちらも作成にあたっては細部の注意が必要となります。

当事務所では、一般事業主行動計画策定・変更届の作成、えるぼし認定申請の事前チェック、えるぼし認定申請のフルサポートなど、幅広く対応いたします。